人を動かす Ｄ・カーネギー
「How to Win Friends and Influence People」
1936年初版、1981年改訂版を経て、約40年ぶりに大改訂
発行：創元社
ページ数：320ページ
読了時間：約3時間30分
この本の魅力
人間関係を改善するための実践的なアドバイスが満載された世界的に評価されたベストセラー。
低コストで即実行可能なアプローチが読者に支持されている。
「人間関係の上手な築き方」というカテゴリーでの古典とも言える書籍。
知識として理解しているけれど実践に移せていない社交スキルが、この本を通じてクリアに理解できる。
読者に、より良い共生を促す内容が含まれている。
著者の伝えたい主旨
日々の心がけと一連の技術を駆使すれば、人間関係は向上する。
これらの知識は、知っている者と知らない者との間に明確な差を生む。
人間関係の基本は、相手を尊重し、その尊重を態度と言葉で表現することにある。
これは最終的に自分に利益をもたらす。
著者情報
デール・カーネギー（Dale Carnegie）
出身地：ミズーリ州。対人スキルの専門家であり、「デール・カーネギー研究所」の所長。
経歴：大学卒業後、教師やセールスマン、さらに食肉加工会社での勤務を経験。大学で習得した弁論術を生かし、YMCAの弁論術講座で教鞭を取る。この講座の教材開発のため、広範囲な文献調査と著名人インタビューを行い、人間関係を良くする方法を体系化した。
書評
具体的な事例が豊富に引用されており、実際の行動（称賛、笑顔、傾聴、相手の面目を保つなど）への重点が明確であるため、理解しやすい内容になっている。
論理的な構成よりも、筆者が重要と考えるポイントを大まかに分類して進めており、
内容の重複があるものの、どこから読んでも理解できる構成。多くの古典的な事例を引用しているが、創造性に欠ける部分もあるが、実生活において役立つ知識が提供されている。
人を動かす 要約・まとめ
人間関係を良好に保つ三つの基本原則
1. 盗人にも五分の理を認める
人々は自身が正しいと信じて行動するものだ。相手を非難するのではなく、
彼らの行動の背景にある理由を理解することが大切である。
失敗や不手際の原因を掘り下げ、共感を示すことが重要。
2. 重要感を持たせる
社会的承認は人間の基本的欲求の一つである。
相手を積極的に褒め称え、感謝を表すことで、その人の自尊心を高め、ポジティブな関係を築くことができる。
3.人の立場に身を置く
「どうすれば相手が行動したくなるか」という視点が重要である。
人が行動するには、それが彼ら自身の利益にかなうと感じる必要がある。
相手の利害を理解し、それに沿った提案をすることが効果的。
人に好かれる六原則
1. 誠実な関心を寄せる
他人への真の関心は、相互関係の基。人々は自分に興味を持ってくれる人に対して好感を持つ。
2. 笑顔を忘れない
笑顔は双方向の幸福を生む。周りを明るくし、自分自身も快適な気持ちになれる。
3. 名前を覚える
相手の名前を正確に覚え、適切に使うことは、敬意を示し、親密さを増す手段である。
4. 聞き手にまわる
積極的に相手の話を聞き、途中で遮らない。誰もが自分の話に耳を傾けてくれる人には自然と好意を抱く。
5. 関心のありかを見抜く
相手が興味を持つテーマや得意分野について話を振ることで、会話を活性化させる。
6. 心からほめる
自分がどのように扱われたいかを基準にして、相手にも同様の接し方をする。
これは、相手に自分の重要性を感じさせ、好意的な関係を築くための基本原則。
人を説得する十二原則
1. 議論を避ける
議論に勝っても何も得られず、相手の自尊心を傷つけ、感情を害するだけである。
2. 謝りを指摘しない
人は間違いを指摘されると防衛的になるため、巧みに間違いに気づかせる方法が望ましい。
3. 謝りを認める
過ちがある場合は、相手が指摘する前に自ら認めることが有効。
4. 穏やかに話す
強制的に意見を押し付けず、味方であるという姿勢で接することが相手の心を開く。
5. イエスと答えられる問題を選ぶ
会話で「はい」という返答を積極的に引き出すことで、相手の同意を促す。
6. しゃべらせる
相手に話をさせることで、彼ら自身が結論に至ることが多い。
7. 思いつかせる
アイデアを相手のものとして扱うことで、積極的な協力を促す。
8. 人の身になる
相手を尊重し、どう感じるかを考慮しながらアプローチする。
9. 同情を寄せる
人はその性質や環境によって形成されるため、その全てを責めるのではなく、共感を示す。
10. 美しい心情に呼びかける
高い道徳的価値に訴えかけることで、行動を促す。
11. 演出を考える
ドラマチックな演出や、新しい視点からのアプローチが効果的。
12. 対抗意識を刺激する
競争心を刺激することで、仕事のモチベーションを高める。
人を変える九原則
1. まずほめる
人は褒められるとモチベーションが上がる。
2. 遠まわしに注意を与える
褒めた後に「しかし」という接続詞を使うと、その後の言葉が本音だと捉えられがち。
褒めた後は「そして」と続け、肯定的に助言する。
「今期の成績が上がって嬉しいね。そして、次もこの調子でいけば、さらに良くなると思うよ」と伝えると良い。
3. 自分の過ちを話す
アドバイスをする前に、自分の過去の失敗や不完全さを語ることで、相手の心の壁を低くする。
自身も完璧ではないと認めることで、相手もアドバイスを受け入れやすくなる。
4. 命令をしない
「これをやれ」と命令するのではなく、「これはどうだろう？」と提案する形を取ることで、
相手に考える余地を与え、より受け入れやすくする。
5. 顔をつぶさない
指導する際は、相手のプライドを尊重し、批判の言葉を避ける。
「経験不足だ」と伝えることで、能力不足とは異なり前向きな改善を促す。
6. わずかなことでもほめる
表面的なお世辞ではなく、具体的な行動や成果に対する賞賛が、相手の心に響く。
小さなことでも認識し、その価値を認めることが重要。
7. 期待をかける
明確に高い期待を伝えることで、相手はその期待に応えようとする。
例えば、リーダーシップを期待する場合、「君ならうまくできる」と声をかけると効果的。
8. 激励する
人々は自己効力感を感じると、より良い成果を出す傾向にある。
「あなたならできる」と激励することで、相手は自己の限界を超えて努力する。
9. 喜んで協力させる
人は与えられた役割に応じて行動することが多い。
任務や特定の役割を通じて協力を求めることで、相手は集団の一員としての自覚を持ち、
より積極的に行動するようになる。
